2012年08月06日

個人・部隊による敬礼

 本文に入る前に、まずこの記事を翻訳したものとはいえ、転載することを快く許可してくれたアメリカのリエナクトグループであるDer Erste Zug http://www.dererstezug.com/index.htm の方々、そして原文を書くために努力した方々や、翻訳に当たって協力してくれた友人たちに心から感謝したいと思います。
 これらの協力がなければ、今私達がこの資料を共有することは出来なかったと思います。

 I would like to thank Der Erste Zug for permitting to quote this article.
Without their efforts and generosity, we would not have been able to share these valuable research.

 今回のものは、筆者が、わかりにくい点には例などを付け加えていますが、
英語で書かれている号令をドイツ語のものにするなど以外は、原作者の意を組んでそのままにしてあります。
しかしながら、ドイツ語から英語、日本語と2回も違う言語へ翻訳されると、その意味も違ってくる場合がありますので、
以下の事柄に興味のある方は、あわせて当時の映像資料(Die deutsche Wochenschauなど)なども参照されることを強くお勧めします。
 また、最後の挨拶に関しては、音声資料の不足等から、筆者自身は違和感を覚えましたが、それを否定する材料を持ち合わせていませんでしたので、そのまま掲載させていただきます。 今後の調査で、その内容を変更させていただく場合がありますので、ご了承ください。
 少なくとも、現代においては”Heil”などと挨拶は行いません。


個人・部隊による敬礼
敬礼の義務
Der Rekrutからの引用
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 以下の、下士官兵にも適用可能であろうものは『駐屯地任務のための規則[原題:Regulations for Garrison Duty]』からの抜粋である。これは、英語に翻訳された1935年のドイツ軍の教本から引用されたものである。Der Rekrutの抜粋をこのサイトで使うことを許可して下さったMichael Bollow氏に感謝します。もし、この教本を購入したい場合は、彼のウェブサイトであるhttp://members.aol.com/soldaten/rekrut.htmへどうぞ。
 このサイトに付け加えてあるドイツ軍の敬礼の画像の例はRay, Josephine Cowdery(名前からして著者とその奥様でしょうか?)のPapers Please![直訳した邦題:許可証をお願いします!]から引用されています。この本は、第二次大戦中のドイツの事務職[書類を扱う職業のことを指す?]についてより多くを学ぶ為に素晴らしいソースです。


個人での敬礼
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制服を着た個人が以下の場合において敬礼する場合:
・総統・首相[原文では-of the Reichとありますが、ドイツの事だと分かるかと思うので省略させて頂きました。]および国防軍最高司令官
•戦争省大臣[聞き慣れない省ですが、かつては存在したそうです。]、国防軍総司令官、地方警察で同等の階級を含む、制服を着たすべての上位階級の者、また同様に制服を着た旧陸軍、旧海軍、かつての国防軍の者。
•旧陸軍およびかつてのseagoing battalionの旗・軍旗[原文で言うところの旗(banner)と軍旗(standard)の違い・訳し方、seagoing battalionが何を意味するかの2点については自分も難解な為分かりかねます。どなたかご存知の方がいましたら、コメント頂けると嬉しいです。]
•海軍の総司令官により決定された旧海軍の軍旗、地方警察の旗

 姿勢を正して着帽しており、 通りすがりか、上位階級の者に向かって立っている(もしくは座っている)場合:右手を帽子またはヘルメットへ添える[要はよく見るタイプの敬礼※1] 無帽の場合:Deutscher Gruß※2[日本語で言うところのナチ式敬礼だとか呼ばれるもの]をする。

個人・部隊による敬礼


 もし、その兵士が何か物を持っているなどの理由で敬礼ができない場合、敬礼の代わりに姿勢を正して歩いたり、座っていたり、気を付けの姿勢で立つ。座った状態での敬礼が容認されるのは、それが必要とされる状況であるか、または狭い車両の中や走行中の車両の中などのように立って敬礼が出来ない場合のみである。その他すべての場合、下位階級の者は敬礼するときに立つ必要がある。
 下士官兵はまた、かつての国防軍の一員や、旧陸軍・海軍の者を含む、礼服姿の従軍牧師のような、制服を着た国防軍の文官にも敬礼しなければならない。
敬礼は素早く、きびきびとしなければならない。敬礼は、上位階級の者の5歩前から始め、通り過ぎて2歩経ってから終える、もしくは部屋に入る時、出る時に行われる。
 酒保を含む兵舎の室内や役所、他の宿泊施設、「注目!(または、気を付け。原文のAttentionからは正確な意味が読み取れないため)」の号令を当直将校が発した場合や、将校や小隊付き(中隊付き)の軍曹が彼らの場所に来た時などに、全員が起立して「休め」の号令を言われるか、部屋を出ていくまで上位階級の者に向かい姿勢を正す。最も古参の階級の者が上位階級の者が来たことを知らせる。事務室などでは「注目」の号令はされず、また上位階級者が来たことも知らせられない。敬礼は座った状態で、上位階級者が部下に話しかけるまで行われる。
公共の交通手段や待合室、寄宿舎、ガーデンカフェ、劇場、コンサートホール、講演室(レクチャールーム)のような兵舎以外の狭い場所では、上官・部下が互いに挨拶する距離まで近づいた場合に敬礼をする。敬礼はその状況に応じて行われる。

 最初に上位階級者に気がついたものが、彼の仲間に適宜、礼儀として敬礼するように知らせる。
敬礼する前に、タバコを銜えるのをやめ、手をポケットから出すなどをする。おしゃべりをしながらや、上記のような物を手に持ちながらの敬礼は許可されていない。
 馬に乗っている時、もし任務に関する物事が妨げられないのならば、歩きながら敬礼をする。馬に乗っている上位階級者を下位階級者が追い越して行きたい場合、そうして良いかどうかを訪ねなければならない。(野戦訓練中や作戦行動中を除く)自転車を運転する人、運転手、騎手は座った状態で姿勢を正す。


個人で行われるべきではない敬礼:
a.車両が動いている状態で、自動車の運転手、または教習生に同乗している軍の運転教官による場合
b.もし交通や自身の安全を危険に晒す可能性のある場合における、自転車、自動車の運転手、騎手や自動車の乗員による場合
c.任務にあたっている部隊の兵士による場合、もしこれらの兵士が上位階級者に話しかけられた場合、彼は起立もしくは座った状態で姿勢を正す:射撃訓練、もしくは戦闘の最中、装備品を身に付けての訓練の最中など
d.駐屯地の指揮官または部隊指揮官の特定の命令の下で、乗馬用逍遙道や乗馬場にいる場合
e.乗り物に乗った伝令による場合


隊列を整えた部隊による敬礼
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隊形の部隊による敬礼は、駐屯地内または兵用宿舎内でのみ行われ、大隊の、敬礼をする(下士官と)兵の指揮の下で行われる:
•総統および首相
•戦争省大臣
•地方警察で同等の階級を含む、制服を着たすべての将校
•旧陸軍およびかつてのseagoing battalionの旗・軍旗[原文で言うところの旗(banner)と軍旗(standard)の違い・訳し方、seagoing battalionが何を意味するかの2点については自分も難解な為分かりかねます。どなたかご存知の方がいましたら、コメント頂けると嬉しいです。]
•海軍の総司令官により決定された旧海軍の軍旗、地方警察の旗

着帽した状態の隊形の部隊
 徒歩で行進中の部隊の場合、敬礼はparade-stepping※3(グースステップ)により行う。(途足[みちあし:隊形は崩さないが、歩調を合わせないこと]で行進していた場合)Im Gleichschritt, marsch![原文ではQuick step, march!:英語に訳す際に齟齬が生じたのか?]、Achtung, Augen rechts(links)![号令については別記事を参照]の号令が出され、Achtungと聞こえたら、グースステップで歩き始める。敬礼の終わりには、 Augen geradeaus, marsch!またはOhne Tritt, marsch!の号令が途足で歩く場合に出される。
 馬または車両に乗って移動中の部隊の場合、敬礼のための号令はAchtung! Augen rechts(links)!であり、Achtungが聞こえたら、座ったまま姿勢を正し、命令の通りにする。Augen rechts(links)!の号令が出されたら、車両の後席の人員は顔の向きを変え、反対側4に目を向ける。敬礼の終わりには、Augen Geradeaus! の号令が出される。
車両で行進している部隊は指揮官の合図で敬礼し、それは車両の運転手を除く全ての随伴している人員によって繰り返されることになっている。
 徒歩で止まっている部隊の場合、指揮官はAchtung! Augen rechts(links)! と号令をかける。馬上もしくは車両に乗っている部隊で止まっている場合、号令は[同じように]Achtung! Augen rechts(links)!となり、階級の高い将校を注視する。もし彼が部隊に沿って歩いていたり馬に乗っていたりする場合は、全員が彼の方を向き(頭を向け)、彼が2歩通り過ぎるまで注視し、そのあと頭と視線を正面へ向ける。もし部隊が降車している場合、Achtung!の号令が出されたら、馬または車両に1歩寄る。指揮官は所定の位置へ行く。Rührt euchの号令が出たら、敬礼をやめる。

無帽状態で隊列を整えた部隊の場合
 無帽状態で隊列を整えた部隊は着帽状態と同じように敬礼をする。しかし、この場合、もし部隊指揮官も無帽状態ならばDeutscher Grußを行う(例を挙げるならば、スポーツ用の服装をしていた場合などである)

隊列を整えた部隊にとって、以下の場合は敬礼をするべきではない:
a.持ち場以外の場所または兵舎の外
b.行進の後、Rührt euch!の号令が出された場合、または止まっている場合。兵が行進中に指揮官とすれ違う場合、各々が彼を姿勢を正して見る。歩兵は号令で銃のスリングをピンと張る。
c.作業用具を用いて土木作業中の場合。指揮官のみが敬礼または挨拶をする。
d.路上警備の場合。警備の指揮官と部下は個々人で敬礼、または挨拶をする。

 隊列を整えた部隊に敬礼されないWehrmachtの人員は、単に指揮官によって敬礼されるか挨拶される。途足[みちあし]で行進している場合(もしくは休めの場合)、各々の兵士は好きなように市民に挨拶して良い。


敬礼する義務
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以下の場合には互いに敬礼する相互義務がある:
a.Wehrmachtの人員同士の場合、規則に関わる敬礼で無い場合に限り、制服を着た地方警察やかつてのWehrmachtの者、旧陸軍、または旧海軍の者も含む。
b.Wehrmachtの人員。警官と局地的な警官(憲兵);公務中の森林管理職員と鉄道警察、DLV[Deutscher Luftsportverband:ドイツ航空協会]とRLB[Reichsluftschutzbund:国家防空連盟]、SAとその下部組織、SS、NSDFB[Nationalsozialistischer Deutscher Frontkämpferbund:鉄兜団(StahlhelmまたはBund der Frontsoldaten)の後身である国家社会主義ドイツ前線戦士連盟]、FAD[Freiwilliger Arbeitsdienst:RAD(国家労働奉仕団)の前身である団体]のメンバーおよびナチ党の政治的指導者たち

以下に対して個々人は更に敬礼する必要がある:
a.隊列を組んで行進中の警察、DLV、RLB、SAとその下部組織、SS、NSDFB、Reichstreubund、Kyffhaeuserbund退役軍人協会[この2つは詳細不明なため、情報募集中です]、FAD、ヒトラー・ユーゲント、その他の国家社会主義の政治組織の旗と旗手に対して。例外としては、SAとSSの指揮旗と、BDM(Bund Deutscher Mädel:ドイツ女子同盟)とJungvolk少年リーグの優勝旗である。
b.ドイツ国歌またはホルストヴェッセルの歌が演奏されている間。
c.記念碑に近づくか入るとき
d.葬式の時
e.上官が私服で、兵が彼[彼ら]を知っている場合


制服を着ていて、着帽した兵士の場合、普通の敬礼がかいつまんで言うと敬礼の規則である。
制服を着ていて、無帽または私服の場合、Deutscher Grußを用いる。

 階級の低い者、または新任の者が先に敬礼をする。仮に、Wehrmachtの者でない者に敬礼していても-兵士らしくキビキビと敬礼するのは、兵士たちの間での敬意の問題である。
既に論じられているが、一定の個人は敬礼の義務を免ぜられている。(例:車両の運転手、乗り物に乗っている伝令など)

自発的な敬礼
 外国の軍人が先に敬礼した場合、任意の敬礼が期待される。隊列を組んだ部隊は敬礼しない。もし敬礼が必要とされる場合は、部署の先任士官または艦の指揮官がそう命ずる。

答礼
 もし、上官が兵士の敬礼に対して”Heil”や”Guten Morgen”などと言った場合、同じ語句を用い、さらにHerr+上官の階級を付け加えて返事をする。
[例:ある少尉(Leutnant)が2等兵(Grenadier)に挨拶した場合]
Leutnant:Guten Morgen.
Grenadier:Guten Morgen, Herr Leutnant !

 上位階級の者が隊列を組んだ部隊に対して挨拶する場合、”Heil”にその部門または部隊の名前が加えられる。部隊側は”Heil”にHerr+上官の階級を添えて返事をする。戦争省大臣の場合は”Heil, Herr General !”、総統である帝国の首相の場合は”Heil, mein Führer”となる。
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※1  44年7月20日に試みられたヒトラー暗殺以後、軍の敬礼は変えられた。伝統的な”軍の敬礼”である、手を帽子のつばまたはヘルメットの淵に当てるものは以後禁止された。 Deutscher Grußまたはナチ党式の敬礼をWehrmachtの公式な敬礼とするよう命令された。 多くの兵士がDeutscher Grußを馬鹿馬鹿しく、非現実的なものと考えた。ある退役軍人が言うには、この新しい命令の後、「飯盒を右手に持って、”党への忠誠”を示すのを強いられるのを妨害するという行為は、中隊の中でも珍しいものではなかった。」そうである。
※2 "Deutscher Gruß ”:ドイツ語でのナチ式敬礼のこと。たとえこれが公式な規則であったとしても、政治的な問題からリエナクターはこの敬礼をしないことをお勧めします。
※3 "Parade-stepping" (Exerziermarsch) : ドイツ語でグースステップのこと。
※4 反対側: 外見上、車両の後部座席に座っている者は逆の方向を向いているということ。


原文:米国のWebサイト Der Erste Zug
http://www.dererstezug.com/salutes.htm




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この記事へのコメント
軍旗(連隊旗)と大隊旗の違いでは?
Posted by 秋津邦男 at 2014年07月01日 00:24
 
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